機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

ばあちゃんの夢

ばあちゃんが亡くなって、およそ二十日。
実家から郵便が届いた。
中にはお葬式の日の写真が何枚かと、
母からの手紙が入っていた。


ばあちゃんが亡くなる二日前、
母は夢を見たらしい。
寝たきりで話せないはずのばあちゃんが母の前にいて、
笑顔でこう言ったそうだ。
「もうすぐ、家に帰れるんよ」


表情も声もあまりに鮮明だったから、
目が覚めた後、父に夢の内容を話したら、
まだ生きとるで、と父は言ったそうだ。


その二日後の朝、電話がかかってきたとき、
母はなんとなく「もしかしておばあちゃんのことかな」
と思ったらしい。
そしてそれは当たっていた。
その日、ばあちゃんは家に帰ってきた、
穏やかな表情で、横たわって。


お葬式の日も母は言っていた。
現実では会話ができないばあちゃんが、
夢の中で母に逢いにきて、知らせたんだと思う、と。


ただの偶然だ、と言えばそうかもしれない。
でも俺は、やっぱばあちゃんが旅立つ前に逢いに来たんじゃないかなあ、と思う。
一番世話になったのは、母だったから。