04/06
おお、あのな…ばあちゃんが、今日、亡くなったよ。
先週の水曜日の夜、電話で、父が言った。
悪い知らせはいつも突然だ。
ばあちゃんはもう何年も寝たきりで、
意識もはっきりしていないような状態が続いていて、
当然俺らが行っても分かるはずもないし、
話をすることもできないし、
手を握ったらぎゅっと握り返してくれるのが
コミュニケーションのすべてだった。
去年の夏、一度容態が悪化したときから、
覚悟はしていたつもりだったんだけど。
あんまり突然すぎて、全然実感が沸かなかった。
慌てて会社に連絡して、休みをもらった。
週末に予約していた夜行バスはキャンセルした。
夜、寝ようとしたときでも、まだ全然信じられなかった。
04/07
朝5時に起きて、早朝の新幹線で実家に帰った。
夕方、ばあちゃんの家に着くと、
すでに葬儀の準備がされていた。
玄関には「忌中」の文字。
壁には黒と白の幕。
仏壇の部屋には、ばあちゃんの横たわった棺。
そして大きな花が、たくさん飾られていた。
棺の中で、ばあちゃんの顔は、穏やかだった。
現実感のない光景に見えた。
自分の中の気持ちは全然追いつかないまま、
お通夜の夜が過ぎた。
04/08
大雨。
ばあちゃんの葬儀には、
カミさんと、四ヶ月になる彼と、
それから義父さんと義母さんも参加してくれた。
お経が読まれた後、
棺が開けられて、みんながばあちゃんの棺に花を入れた。
彼を抱っこして、棺の横に立った。
ばあちゃん、
初めて見せるけど、俺の子供だよ。
元気だったら、だっこしてほしかったよ。
ばあちゃんにそう話しかけた。
ばあちゃんは孫の俺らはかわいがってくれたからな。
ひ孫もきっとかわいがってくれただろうな。
ばあちゃんが彼をだっこしているのを想像したら、
一気に泣けた。
その後、火葬場に向かった。
焼却炉に入るときは、
いよいよばあちゃんの存在がなくなってしまうという
実感に襲われて、声をかけずにはいられなかった。
じゃあの、ばあちゃん。
今まで、ありがとな。
そして、ガシャン、と焼却炉の蓋が閉じられた。
ばあちゃんは、自分の人生についてほとんど話さなかったから、
ばあちゃん自身が満足して逝ったかどうか、
正直なところ分からない。
俺が知っているのも、ばあちゃんの人生の三分の二が過ぎてからだし…。
ただ少なくとも、畑で取った野菜をくれたときとか、
田植えや稲刈りを手伝ったときとか、
盆や正月に親戚みんなが集まったときとか、
久しぶりに帰って顔を見せたときとか、
ばあちゃんはとても嬉しそうに、満足そうに笑っていた。
今頃は、三十年前に先に旅立ったじいちゃんと、
久しぶりに語っているだろう。
積もり積もった話があるだろうから、
ゆっくり休んでくれよ。
ほんとに、今まで、ありがとう。