機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

部屋の中の変遷

一人暮らしをしていた頃、
自分の部屋の中では好きなモノに囲まれていたかった。
好きな服、
好きなCD、
好きな本、
好きなオモチャ、
好きなギター。


壁に吊るしたギターの向かい側には、
ネイティブアメリカンの文化に興味を持って購入した鹿の頭骨が飾ってあった。
コンポの上にはナイトメアビフォアクリスマスのフィギュアがあって、
その横にはエアガンが並んでた。
押入れの中の突っ張り棒には今ではまず買わない価格のジャケットとかジーンズとかが掛けられていて、
部屋の真ん中のテーブルの上には彫金道具とか染色剤とかが出しっぱなしになっていた。
インテリアの本を見るのも好きだったから、
そういうゴチャゴチャとしたモノたちをできるだけ格好良く見せようとしたりもしてた。


家の中を見ればそこに住む人がどんな人かだいたい分かるもんだけど、
要するにその頃の俺はそんな人だったんだ。


三十代になって趣味が変わったり結婚して二人で暮らすように
なったりしているうちに、
周りにあった色んなモノは少しずつ手元から離れていった。
今はその中でも選りすぐりのモノが残っていて、
いくつかはまだ飾られていたり壁に掛かっていたりするけど、
数はずいぶん減った。


今の家の中は、彼のモノで溢れてる。
ベビーベッドにチェストにベビーカー。
オムツに肌着に哺乳瓶。
たくさんの洗濯物もあれば、使用済みオムツ用ゴミ箱もある。


家の中にてんとう虫の服が掛けられていたり
なんだかよく分からないブタさんやチョウチョがくっついた
カーペットが敷かれていたりするのは、
昔の俺からしたら想像すらできなかったと思う。


でも今はそれで全然いい。
子育てが変えるのは家の中だけじゃなくて
ライフスタイルそのものを激変させるものだけど
(特にカミさんはそうだと思うけど)、
それに見合うモチベーションが
自分でも驚くくらいオラアーッと湧いてくる。


だからこれから先アンパンマンのおもちゃとか
なんかよく分からないカラフルなモノとか
レゴとかミニカーとか増えそうだけど、
それと引き換えに俺のモノは押入れの中に仕舞われそうだけど、
それで全然いい、と思う。


あ、でもギターはどうしようかのう。
壁に掛けていて
「だー」とか言いながらよだれでベタベタにされるのもイヤだけど、
ケースに入れて押入れに仕舞うのもちょっとイヤだな。
どうしようかのう。