機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

シリアス顔のブー

彼がこの世に生を受けて、二ヶ月弱。
ついに彼とカミさんが家に戻ってきた。


カミさんの荷物に加えて、
彼のオムツとか着替えとかタオルとか入浴用品とか布団とか、
色々なモノたちを引き連れての大移動。
当然車の中はギューギュー詰め。
家の中もギューギュー詰めだ。


それらのモノたちの片付けとか
ちょっと買い足さなくちゃいけないモノもあったりしたので、
お義母さんが助っ人に来てくれた。
お義母さんが彼を抱っこしてくれたり
ゴハンを作ってくれたりしている間、
カミさんは片づけをしたり、
俺は収納用品を買いに行ったり。
その合間に授乳とか寝かしつけも加わって、
なかなかに目まぐるしい。


そんな中、カミさんとお義母さんが一週間分の買い物を
するため、小一時間外出した。
その瞬間、部屋の中は人生初の「子供と二人きりの空間」になった。


おお。
なんだか緊張するじゃねえか…
相手はたかだか0.2才にも及ばない若輩者にもかかわらず、だ。


そんな俺の動揺など気にも留めず、
彼は「あー」とか「うー」とか言いながら手足を動かしている。
とりあえず何事もなく寝てくれ、と思いながら、
ひたすらだっこしていたんだけど。


不意に、彼の表情がシリアスになった。
眉間にシワ。
かみ締めた唇。
そして宙を見つめながら
「………………………」
となにやら思案に暮れている。
「これはまさか…」
と思ったら、ケツの方から「ブー」というラッパ音。
立て続けに「ブブー」と続く。


これはやった。
確実にやった。
やっちまった。


彼は、反省したようにもはにかんだようにも見える微妙な表情で俺を見つめた。


わかったよ。
そんな目で見ないでくれ。
やることはわかってる。
ベビーランゲージ初歩中の初歩、
「シリアス顔のブー、そして無言」は、
「ウンコした。至急オムツ替えてくれ」だろ?


意を決してオムツ替えに取り掛かる。
昨日カミさんのお手本を再確認したばっかりだからな。
オシリ拭きはどこだ。
ええっと…


そしてなんとか無事にオムツ替え成功。
はー。
よかった。
オムツ替えるだけでコレだから、
お風呂に入れるのなんて俺にとっては一大事だ。
明日、上手に入れられるかのう。