機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

渋滞の先

救急車の音が聞こえた。

土手の道路は渋滞していた。

橋の向こうにパトライトが回っているのが見えた。

複数のパトカーがいて、そのうちの一台がこちらにやって来て、片側の道路を塞いだ。

 

事故現場は橋を渡った先の交差点だった。

巨大なイモムシが横たわってるように見えたのは、フロントの潰れたバイクだった。

ハンドルがどこにあったのかも分からないくらいに砕け散っていて、飛散したプラスチックや金属部品はイモムシの内臓のようだった。

衝突したであろう対向車は、なぜかそこにはいなかった。

 

恐ろしい光景で、見た瞬間に怖くなった。

 

通勤中に急いで無理に曲がったのだろうか。

信号は赤になった瞬間だったのだろうか。

対向車は、どこに行ったのだろうか。

運転者は、無事なのだろうか…

 

飛散物の中に手袋があった。