機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

新幹線で隣りに座った親子

新幹線での移動中。
三歳くらいの女の子とそのお母さんが、隣りの座席に座った。
女の子はニコニコしていて、駅に着くたびに
「おばあちゃんち、次?」
と聞いている。
「まだもう少しね」
とお母さんが答えると、聞いているのかいないのか、
フンフンと鼻唄を歌っていた。


「ちょっとトイレに行ってくるからね」
とお母さんが席を立った。
女の子は「うん」と言って、しばらく鼻唄を歌っていたのだけど、
「あっそうだ。のどかわいたから、ジュース飲もっと」
と、小さいペットボトルのジュースを取り出した。
「よいしょ。うーん。固くて開かない。
よいしょ。うーん。固くて開かない」
と言いながら一生懸命ふたを回すけど、開かない(笑)。


「かしてみんちゃい」と言って、開けてあげた。
そうするとまたにっこり笑って、
「ありがと!」
と言った。
ジュースをごくごく飲んで、
「ああ美味しい。…ああ美味しい!
…お母さん、まだかなあ?」
と聞いてくる。
「もう少ししたら戻ってくるよ」
と答えると、
「そうだね!」
と、またゴクゴクゴク。
飲んでいるうちに、手元からジュースのふたが落ちた。
「あ!」
転がるふたが足元に来たので拾ってあげると、
「ありがと!エヘヘ。ありがとうねえ。
お母さん、まだかなあ?」
「もう少ししたら戻ってくるよ」
「そうだね!」
と、同じ会話を繰り返す(笑)。


そこへお母さんが戻ってきた。
「あのねー、ジュースのふた開けてもらった」
「あらあら、どうもすみません」
「いえいえ(笑)」
「それからねー、ジュースのふた拾ってもらった」
「ああ、どうもすみません」
「いえいえ(笑)」


お母さんのいないところで見知らぬ人(俺)にちゃんとお礼も言えて、
それを後でお母さんに報告する辺り、
普段からちゃんとしつけされているんだろうなあと思った。


女の子は終始楽しそうにニコニコしていた。