機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

近所の揚げ物屋さん

コロッケやメンチカツ、手羽先、から揚げなどを売る揚げ物屋さんが近所にある。


値段はどれも一個¥100〜¥200前後。
安くてうまいので、ちょいちょい買いに行く。


たいていはおばちゃんが一人で店頭に立っている。


引き戸を開けて中に入ると、
「はいいらっしゃい」
と言いながら、店の奥からおばちゃんは出てくる。
おばちゃんの髪型はリーゼント風パーマだ。
その髪型にエプロンというスタイルで、違和感ゼロだ。


「おばちゃんの髪型、ビーバップハイスクールのヤンキーみたいだね」と思う。
「おばちゃんの髪型、ロカビリーだね」とも思う。
そう思うけど口には出さずに、
「コロッケいっことメンチカツいっこね」と言う。
すると「はい」と言いながら
おばちゃんは冷蔵庫の中からそれぞれを取り出し、油でじゅーと揚げ始める。


お客さん用の椅子の横には、
「いらっしゃい、からあげはいかがですか。おいしいよ」
とチョークで(あまり上手とは言えない文字で)書かれた小さい黒板が置いてある。
その文字の横には、なんだかよくわからない丸いものも書いてある。
それは姪っ子さんが書いたもので、丸いものはたぶんコロッケなのだそうだ(笑)。
それをちゃんと店内に飾ってるのが意気だ。


「今日は寒いねえ」とおばちゃんが言って、
「ほうじゃねえ。寒いねえ」と答える。
「風があるけえ、そろそろマフラーせんと自転車は寒いじゃろう」とおばちゃんが言って、
「ほうじゃねえ。こんだけ寒いとマフラーいるねえ」と答える。
そんな会話をしているうちにコロッケとメンチカツが揚がる。


「はい。200円ね」とおばちゃんが言って、
「あ、レシートあるかいね」と答える。
「レシートあるよ。ちゃんとレシート持って帰るんじゃね。えらいね」とおばちゃんが言って、
「えらいじゃろ。ハハハ」と答える。
そんなやり取りをして、コロッケとメンチカツを買って帰る。
この会話、なんだか懐かしい感じだよな、と思ったら、
子供の頃の駄菓子屋さんでのやり取りを思い出した。
何気ないやり取りだけど、こういう店ならではの会話で、悪くない。


店の名前は「ワールド・ワン」。
直訳すると世界にひとつ。
店の名前もダイナミックで、悪くない。