ずいぶん前の話。
最終電車に自分は乗っていた。
少し離れた電車の出入口付近には、明らかに飲み過ぎた風体の大学生らしき男子が立っていた。
下を向いて口を抑えたまましばらく静止していたのだけど、堪えきれなくなったんだろう、その場で吐いてしまった。
自分は、それを見た瞬間に嫌な気持ちしかしなかった。
車内にトイレがあるんだからなぜそこに入らないんだ、と思った。
すると離れたところにいたある女の人がその男子に近寄り、
ハンカチを手渡し、大丈夫ですか、と声を掛けた。
男子は会釈をしてハンカチを受け取り、顔や胸元を拭いていた。
正直、驚いた。
電車の中で吐いてる人に近づいてハンカチを渡す、ていうのはなかなかできることじゃない。
俺がハンカチ渡された方だったら感動して泣くかもしれん。