機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

職人不要

テレビ、ラジオ、テープレコーダー、洗濯機、冷蔵庫、クーラー。
一昔前の家電製品は、壊れたら買い換えるものではなく、
壊れたら修理するものだった。


だから街の電器屋さんは家電を売るだけでなく、
それを修理する職人的な業も持っていた。


うちの実家は小さな電器屋を営んでいるのだけど、
俺が子供の頃、店の横に父の作業場があった。
その場所で父は作業台に向かって立ち、
なんだかよく分からない工具を使って壊れた製品を分解し、
ウイーンとやったりカチャカチャやったりしていた。


いつの頃からかそんな風に壊れた製品を修理している姿を
見かけることは少なくなり、
作業場のスペースはリフォームされて、俺らの子供部屋になった。


最近の家電はどんどん電子制御化が進み、
壊れたら基盤ごと取り替えてハイ終わり、というものが少なくない
(ブラウン管から液晶に変わったテレビなんていい例)。
その傾向は家電だけでなく、車なんかも同じだ。


それでも修理して使えるならまだいい方で、
「修理するより新しいのを買った方が安いですよ」
なんてことを言われるのは今や普通になってしまった。


効率化の名の下に、修理作業はどんどん簡素化されていく。
そこに複雑な構造を熟知して作業をする職人の業は不要だ。
日本の経済発展の一端を担ったのは、たぶんこういう職人の業だったはずなんだけど…


この間実家に帰ったとき、
「最近の家電はつまらん」
と、父はぼやいていた。