機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

高いところへ

少しだけ高いところに上ったら、
周りの人たちを見下ろせて、
気持ちが良かったよ。


だからもっと高いところに上ったよ。
そうしたら「木の実を取って」と言われたよ。
取ってあげたら「ありがとう」と言われて、
気持ちが良かったよ。


だからもっと高いところに上ったよ。
下の人たちが何か言ってるけれど、
よく聞こえなかったよ。
それよりもそこから見える景色がきれいで、
気持ちが良かったよ。


だからもっと高いところに上ったよ。
下の人たちは見えなくなったよ。
そこには自分しかいなくて、
ものすごく遠くまで見渡せて、
まるでそれが自分のもののように思えて、
気持ちが良かったよ。


だからもっと高いところに上ったよ。
だんだん暗くなってきて、夜が来たよ。
見渡す限りの暗闇の中で誰も話し相手がいなくて、
寂しくて怖くなってきたよ。


だから下に下りようと思ったよ。
でも本当に暗くて足元もよく見えなかったから、
下りようにも下りられなかったよ。


朝が来るまで何もできずに
震えていたよ。