機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

真っ白の人

はじめは真っ白だった。
そして純粋だった。
純粋で、無知だった。


愉快なら笑った。
不愉快なら泣いた。


やがて言葉を覚えた。
心を伝えるためには言葉が必要だということを知った。


そして知識を得た。
世の中には善と悪があることを知った。
信じるためには疑わなければならないことを知った。


たくさんの色を知った。
いつの間にか真っ白ではなくなっていた。
赤いところや、
黄色いところや、
青いところや、
緑のところや、
灰色のところや、
黒いところができていた。


時々、
爆発するように真っ赤になったり、
光が射すように真っ黄色になったり、
深い夜のように真っ黒になったりした。


もはや純粋ではなかった。
無知でもなかった。
彩り豊かな姿になっていた。