胃袋は言った。
「もうお腹いっぱいだよ!もう入らんよ!」
それを聞いた目はこう言い返した。
「でも、まだ残ってるのが見えます!
残したらもったいないです!」
箸を持つ右手はそれに賛同した。
「そうだな、もったいないな!」
右手は目に映る残りを箸でつかむと、口に運んだ。
左手は「無理しない方がいいのに…」と思いつつ、
何も言わずに見守っていた。
鼻は言った。
「ほら、こんなにいい匂いがするだろう?
食欲をそそるだろう?」
胃袋は言った。
「さっきまではそれは芳しい匂いだったんだが、
今となっては逆効果なんよ!ォェ」
左手は「だいじょぶか?」と言いながら、
外から胃の辺りをさすった。
右手は言った。
「はいはい、わかったからもう口に入りますよ!」
歯と舌は一斉に「りょうかーい!」と返事をした。
そして「ソシャク、開始!」という号令と共にモグモグ噛み始めた。
喉は言った。
「これよりノド通過します!
もうじき胃袋に向かいます!」
胃袋は言った。
「けっこう満員です!
朝の通勤電車のようです!押し込むんですか?」
右手は言った。
「押し込んでくださーい!」
喉は言った。
「いっせーの、よいしょー!はい、ノド通過しました!」
胃袋は言った。
「うわーまたきたー!ほらそこー詰めて詰めて!
入り口付近に固まらないでください!
…あ、奥からゲップきます!ゲップ放出します!」
喉は言った。
「了解!ゲップきまーす!」
気がつくと左手は汗をかいていた。
「無理すると後がしんどいよ」
と言いながら、口を押さえた。