機械仕掛けの豚

クソみたいな世の中だと憂う前に、目の前のものを愛そう。

ぼくにも言いたいことはある


朝起きたらおなか減ってるだろ。
それで隣りにお母さんがいなかったら、
そりゃ泣くだろ。
それは、仕方ないだろ。
ぼくだって泣きたくて泣いてるんじゃないんだよ。


本棚の本を毎日のように全部出してたら、
昨日その棚にテープが貼ってあった。
「本が落ちて頭に当たったら危ない」って
お父さんが言っていたけど、
あれもさ、楽しかったからやっただけだよ。
楽しかったらやるだろ。普通。


テーブルの上の積み木を放り投げたら
寝っ転がってるお父さんの頭に当たって、
「痛いのう」って本気で痛がっていたけど、
あれだってわざとじゃないんだ。
ただ放り投げたかっただけなんだ。


それから最近うちの電話機の調子が悪いのは、
なんかぼくが面白がって何度も「保留」を押して
BGMを流しっぱなしにしてたせいかもしれない。
仕方ないだろ。楽しかったんだ。


お父さんの好きなバンドのCDを引っ張り出して、
じゅうたんの下に隠していたのもぼくだよ。
特に理由はないよ。
お父さんは傷だらけになったCDを見て苦笑いしてたけど、
次の日、CDはぜんぶぼくの手の届かないところにあった。
あれじゃもう触れないね。


ぼくをいつも抱っこしているから、
お母さんは腕に筋肉がついたって言っていた。
でも仕方ないだろ。
お母さんに抱っこされるのが一番居心地がいいんだ。


お父さんが仕事から帰って来たら、
ドアがガチャって開くんだ。
あの音を聞いたら、嬉しいんだよ。
帰ってきたって思って。


泣いたり笑ったり、忙しいんだよ。
ぼくもいろいろあるんだ。
いろいろあるんだよ。


わかってくれよな。
はあ。